SANRIZUKA 日誌 HP版   2003/06/01〜30    

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 2003年6月

 

〔週刊『三里塚』編集委員会HP部責任編集〕 

(6月2日) 「一坪」共有者と買収合意(6/3読売千葉版)

 空港公団は2日までに、成田空港計画地に残る一坪共有地1か所を共有する男性(48)との間で、男性の持ち分を買収することで合意した。公団は昨年12月、8カ所の一坪共有地を対象に、男性を含む延べ17人の共有者の持ち分を金銭賠償で取得することを求めた「共有地分割訴訟」を起こしていた。提訴後に売却に応じた共有者は3人目。
 男性の持ち分がある一坪共有地は、平行滑走路予定地西側にあり、約80平方メートル。公団によると、昨年4月に暫定供用した滑走路と第2旅客ビルを結ぶ誘導路を曲げて設置せざるを得ず、航空機の円滑な地上走行を妨げているという。
 男性は売却に応じる理由について、「空港に反対しておらず、裁判で争うつもりはない」と説明している。公団は売買契約を結んだ後、男性に対する訴えを取り下げる方針で、この一坪共有地の共有者は残り1人となる。

 【本紙の解説】
 売却したのは、芝山町菱田地区東出身の伊藤敢である。三里塚闘争にかかわらず、学校をでてすぐ東京に就職した人である。親が反対同盟で一坪共有者であったことから相続したものであった。
 しかし、公団もいっているように、この一坪共有地はまだ共有者がおり、公団が自由に処分できるものではない。

(6月3日) 新東京空港署/新型肺炎対策で署員ら勉強会 (毎日千葉版、千葉日報)

 新型肺炎「重症急性呼吸器症候群」(SARS)について学び、空港業務に生かそうと、新東京空港署の署員75人が3日、芝山町の高根病院診療部長で感染専門医の菅野治重医師を招き、SARS対策の勉強会を開いた。
 菅野医師は「道案内や落とし物の受け付けなどの日常業務から事件・事故に至るまで、マスクを常に携行してほしい」と要望。また、患者が発生した場合について「現場に向かう場合、防護スーツ、ゴーグル、手袋など万全の体制で処理にあたってもらいたい」とアドバイスした。
 渋谷均副署長は「空港内で患者が発生した場合、混乱を収拾するはずの警察官がSARSのことを知らないのでは話にならない。今後も知識を身につけていきたい」と話した。

 【本紙の解説】
 空港のSARS対策が、「安全」だけを宣言するだけではすまない段階になってきた。しかし、今回の空警の勉強会は乗客の感染を防ぐことでなく、自分らが感染しないための勉強会だったらしい。空港職員などが感染しないこともSARS対策の重要な一環だが、空港に出入りする乗客・職員などすべての人が感染しないためにどうするのかが基本ではないか。

(6月4日) 空港でボヤ/到着ロビーなど一時騒然(朝日、読売、毎日各千葉版)

 4日午後2時40分ごろ、成田空港第1ターミナルビル1階で煙が充満している、と新東京国際空港公団に連絡があった。成田市消防本部などが出動したところ、同ビル3階の空調機械室が出火場所と分かり、約40分後に鎮火した。けが人はなかった。航空機の運航に影響はなかったが、1階到着ロビーなどに煙が充満して、旅客者が避難するなど一時騒然となった。
 公団や消防本部などによると、公団から業務委託されたメンテナンス会社の点検作業中だった。点検を終えて電源を入れ直したところ、白煙が立ち上った。空港ビルの空調を行うダクトのフィルターなどが燃えたという。
 この火災で、第1ビルの中央棟と北棟を結ぶ1階と2階の防火シャッターが作動。到着ロビーにいた約300人の旅客者が一時避難したほか、封鎖された到着ロビーの旅客者が1時間近く足止めされた。また、航空会社の入居する事務フロアなどにも煙が充満して一時騒然となった。公団側は「避難誘導などに問題はなかった」と話している。
 公団によると、開港(78年)から空港ビル内の火災は12件目。昨年7月には第2ビルで飲食店の調理室が出火元になる火災が発生した。

 【本紙の解説】
 78年開港から25年たって12件目の火災とのことなので2年に1回である。しかし、ここ3年は毎年おこっている。01年12月には同サテライトに向かう「動く歩道」で火災が発生した。02年7月には第2ビル飲食店で発生した。今回は第1ビル3階の空調機械室であった。
 01年の「動く歩道」も同じだが、老朽化とその点検整備の不十分さが火災発生の原因である。
 平行滑走路をむりやり建設してきたことにより、既存設備の改修などがなおざりになっているのである。そのため、今後も火災は頻発するのではないか。SARS対策も含めた財政難から整備費用が大幅に削減になるようだが、1ビル、2ビルの補修も遅れるので、火災発生率は高くなるのはないか。

(6月5日) 羽田シャトル便/羽田−ソウルにシャトル便、日韓政府が検討(6/5日経夕刊)

 日韓両政府は5日、東京とソウルを一定間隔で頻繁に結ぶ「航空シャトル便」の開設を本格的に検討する方針を固めた。国内線専用の羽田、金浦空港(ソウル市)を特例的に開放する。両空港はそれぞれ東京とソウルの中心部に近く、利便性が高い。観光や経済交流の活発化が狙いで、小泉純一郎首相と盧武鉉大統領が7日の首脳会談で協議する。調整が進めば、年内にも実現する可能性がある。
 当初は1日4便(1便は1往復)程度で開始する見通し。2〜3時間おきに出発便がでるため、観光客やビジネスマンが気軽に利用できる。羽田の再拡張事業が完成すれば、さらに増便する。現在は日本側が千葉県の成田、韓国側がソウル郊外の仁川空港しか利用できず、東京の中心部からソウルの中心部までは最短で5〜6時間程度(飛行時間含む)かかる。羽田と金浦が利用できれば、1〜2時間は所要時間を短縮できる。

 【本紙の解説】
 成田―仁川便のかなりの便が羽田−金浦便になりそうだ。年内に1日4便、週28便がジャトル便として定期便となる計画である。成田―仁川便は8社で現在週128便である。路線の新設だが、実際は成田のアジア便は搭乗率が極端に減り、運休便も多くでているので事実上の移行である。この羽田―金浦便がドル箱路線になれば、羽田の運航枠一杯まで1日の便数を増やすことになる。日航などは国内線枠を羽田―仁川便に振りかえることになる。また全日空はアシアナ航空とコードシェアを組んでいるが、全日空の羽田発着の赤字地方路線をアシアナ航空とのコードシェア便に振り分けることになる。
 問題は、国際民間航空機構(ICAO)を設立させた国際民間航空条約(シカゴ条約)に抵触することである。シカゴ条約の中に、一定距離内のすべての国を平等に扱うという規則がある。そのため、韓国便だけを国内専用空港である羽田で運航することは無理がある。
 日韓ワールドカップサッカーの時は、このシカゴ条約に、プレクリアランス協定を結ぶ国に限って「準国内線扱い」するという例外規定を適用した。プレクリアランスとは、相互に入国審査官を派遣し「準国内線扱い」するということ。
 この方式は、米ワシントンDCナショナル空港、NYラガーディア空港からのカナダとか、英領バミューダ、バハマなどで運航している。つまり同一経済圏内での運航ということになる。日本と韓国は同一の経済圏ではない。そのため、このケースではプレクリアランス協定はシカゴ条約に反する。
 しかし、日韓ワールドカップサッカーの時の実績で運航は行われるようだ。近隣諸国の反対がなければ押し切れるという判断か。近隣諸国の最大は中国である。中国はSARS問題で揺れていて、航空会社の危機も極限に達しており、この問題で反論をはさむ余裕がないようだ。
 いずれにしても、羽田―金浦便は、羽田の国際定期便の事実上の開始であり、成田が首都圏の唯一の国際空港ではなくなる。成田空港の位置が決定的に低下することの始まりである。

(6月6日) 千葉県、新型肺炎で緊急提案(6/7読売、東京の各千葉版)

 千葉県は6日、新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)の対策についてまとめた緊急提案を厚生労働省に提出した。県内に成田空港を擁することから、空港近辺の医療機関の整備など7項目にわたる対策を訴えている。
 提案では、成田空港からSARSの患者を搬送する際、感染拡大の恐れがあることを挙げ、空港近辺への特定感染症指定医療機関の整備を求めた。
 同医療機関は現在、東京都と大阪府の2カ所しかなく、県疾病対策室は「県内には空港関係者が多いため、患者と接する可能性も高い」と必要性を指摘している。
 また、国立感染症研究所(東京都新宿区)に24時間体制の「SARS相談センター」の開設や、初期診療を行う一般医療機関への国庫補助制度の創設、SARSに関する研究開発の促進なども提案した。

【本紙の解説】
 空港側がSARSは対策をきちんとやれば安全だとの宣伝と裏腹に、厚生労働省、国土交通省、そして千葉県も、SARSの感染源として可能性が一番高いのは成田空港であると判断している。しかし「疑い例」が出てもその搬送方法や対処方法についてきちんとした取り決めもなく、5月31日のように「騒然」となっていただけなのだ(03年5月31日付日誌を参照)
 このままでは、成田空港、成田空港に乗り入れている京成・JR・バス、そして成田の病院などがSARSの感染の場所になりそうだ。それにしても、中国の衛生部やICAO、IATAと同じで、SARSは怖くないとの宣伝のために対策をしているだけで、実質的対策はまだ本格的に行われていない。

(6月6日) 京成電鉄がSARS対策(6/7日経)

 京成電鉄は成田空港に乗り入れているすべての電車を対象に、SARS対策の車内消毒を始めた。患者発生に備えた予防措置として特急スカイライナーは3日に1度、通勤車両は7日に1度のペースでウィルス用消毒液を車内散布し、利用客の不安解消につなげる。
 毎月1回実施している害虫駆除用とは別の、ウィルスに対して効果が高い消毒液を使用する。コストは1両当たり150円。現在は1日当たり約80両が対象。国内で感染患者が実際に発生した場合はさらに消毒頻度を高めて対応する。
 京成電鉄は今年度の鉄道収入がSARSの影響で9億〜10億円減少するとみている。成田空港を利用する乗客が落ち込むためで、4月は前年同月比1.4パーセント減だった。

【本紙の解説】
 本紙でも京成電車がSARSの感染現場になると再三警告を発していた。しかし、京成電車が発表した対策はアリバイ行為そのものである。スカイライナーが3日に1度、他の電車が週に1度の消毒では対策ではない。消毒にかける1日分の経費はたかだか1万2000円である。1カ月でも36万円である。年間収入が10億前後落ち込むので、これしかSARS対策費が計上できないのだろうか。このレベルの対策では、京成電車で感染した場合に「対策は取っていた」と弁解するためのアリバイづくりと言われても仕方がない。

(6月6日) テロよりも新型肺炎怖い(東京、読売千葉版)

 新型肺炎(SARS)の影響で、深刻な利用客減がつづく成田空港で、1日の出発客数の対前年比減少率が、これまで過去最悪だった一昨年9月の9・11反米ゲリラによる減少率を上回ったことが6日、新東京国際空港公団のまとめで分かった。
 過去最悪の前年比減少率を記録したのは5月2日の60.74パーセント減。これまで過去最悪だったのはゲリラ発生の3日後にあたる2001年9月14日の53.12パーセント減。1日の出発客数もテロ以降の最低値だった1万8993人(01年9月13日)を5515人下回る1万3478人(今年4月30日)にまで落ち込んだ。同公団は「テロのときは、前年並みまで回復するのに約半年かかった。今回は、肺炎問題が終息してから、さらに半年はかかるだろう」と話している。

【本紙の解説】
 前年比で60パーセントを超える減少とは、すさまじい数字である。多くの人が恐怖におののき、航空機搭乗を取りやめたのである。
 しかもSARSは今後も爆発的に進行する可能性がある。当初、公団や航空会社の関係者では夏休み前に終わればいいが、それは無理でも9月までにはSARSは収まると考えていた。また前年比で15〜20パーセント減との予測で、公団は年間の赤字を毎月15億円、9月までの6カ月間で90億円を見込んでいた。しかし、前年比で半減がすでに1カ月以上もつづき、また9月には終わりそうにないことで、SARS問題による経営危機の抜本的解決案とそれに基づく民営化問題の手直しの準備も始めたようだ。
 羽田の国際的定期便が今年中に、羽田―金浦便として就航しそうである。このままでは首都圏唯一の国際空港という成田空港の権威は揺らぎ始める。
 国と国土交通省、空港公団は成田空港を民営化し、政府出資金3000億円のうち1500億円を株式として上場する計画であった。5万円の額面で300万株発行する予定である。
 証券会社と公団の上場時の相場を民営化が決定する過程で売却総額5000億円〜7000億円と計算していた。総資産約1兆円、総事業コスト1兆5000億円、年間営業収入1500億円を基礎に計算した。年間営業収入が2000億円をこえれば1兆円で売却できるとも算段していた。5万円額面の株券が30万円以上の値をつけるということである。
 そのための条件は平行滑走路の完全完成であった。逆に、暫定滑走路のままで羽田の国際定期便の就航が大々的に進行し、さらにSARSの影響が数年間つづくことになれば、成田の営業収入は1000億円を割り込むことになる。そうすると、株券は額面割れになると計算されている。株式売却額の幅は、下は1000億円前後から上は1兆円までの開きとなるのだ。2500メートル化しても飛べるジャンボ機は日航と全日空が所有している同型機の3割程度しかない。これはほとんど国内線専用機である。また公団・黒野が東峰区を脅すために振りまく「北側再延伸」計画だと、そもそもジャンボ機が滑走路内に入れない(狭い誘導路問題など)。運用上意味のない北側再延伸も含めて、公団が「2500メートル化」にこだわる意図は、上場時の株価をつり上げるためなのである。

(6月12日) 羽田拡張、国際便増便で国交省と地元が基本合意(6/12朝日、読売、毎日、東京)

 国土交通省は、羽田空港に4本目の滑走路を作る拡張事業に向けて12日開いた東京都など地元の8都県市との「第3回羽田空港再拡張計画に関する協議会」で、2012年度に国際線を年間3万回程度発着する計画を示し、基本合意した。
 羽田空港は国内線専用空港だが、拡張後は発着枠が現在の1.5倍の年40万7000回に増えることから、国際線にも割り当てることにした。国交省案が実現すれば、羽田の発着枠の40分の3が国際便で占められることになる。
 国際便の路線に関しては、羽田空港から半径1800キロメートルと、同2200キロメートルの2種類の空域を想定し、韓国、中国など一定の距離に限定して運航する計画だ。羽田には現在、国際チャーター便などが発着しているが、政府は昨年6月、発着枠増加後には、羽田にも国際線を割り当てることを閣議決定していた。

【本紙の解説】
 羽田の国際化で12年度には年間3万回の発着便を国際線として割り当てると発表した。12年度は、実際は09年度になりそうだ。4本目目の滑走路新設計画は当初12年度完成の予定であった。その後、建設工法が埋め立てより短期で出来るメガフロート方式と桟橋方式が本命になり、09年度完成目標に変わってきた。公的にはいまだ12年だが、実際の目標は09年度完成ということであろう。
 また、国際線枠の割り当ては、国内線枠の余剰枠となっている。実際には再拡張で13.2万回増加する。国内線需要はその半分もない。したがって、8万回〜9万回は数字上割り当て可能だ。実際は税関や入国管理、検疫などのCIQ体制が整うのを待たなければならない。しかし成田暫定滑走路の年間4万回程度の発着回数分は完全に移管できる。現在成田の年間発着回数は17万回で、そのうち半分がアジア便だが、成田発着のアジア便のほとんどはすう勢的に羽田に移管することになりそうだ。
 まずは、羽田―金浦間のみで1日4便から出発するが、日航や全日空が持っている国内線枠を国際線枠に転換することになりそうだ。「同距離の国を平等に扱う」というシカゴ条約は、「羽田から2200キロメートル以内で成田に乗り入れていない空港からの乗り入れを許可する」ということでクリアする方針である。そうすると、まずは韓国便で始まるが、中国の北京、台湾路線が次の国際定期便になりそうだ。ただし、SARS(新型肺炎)の影響でこの2地区からの乗り入れは当面は先になりそうだ。
 しかし、これで成田は数年後には欧米長距離便中心の「国際空港」に特化する運命は確定した。

(6月12日) 羽田拡張計画、千葉県堂本知事「騒音問題の共有」を訴える

 12日に開催された「羽田空港再拡張計画に関する「第3回協議会」で、堂本暁子千葉県知事が、異例の事前記者会見を開催。千葉が受ける騒音被害などを挙げ、「千葉だけが騒音被害を引き受けるのはおかしい」と慎重論を打ち上げて波紋を広げた。知事は羽田拡張を「トイレ」や「ごみ」に例えてみせるなど激しく攻撃。「地元のエゴではないか」との批判にも反論するなど、国に対する不信感をあらわにしたが、羽田拡張問題で孤立する千葉の姿を浮き彫りにする結果ともなった。
 会見で堂本知事は、再拡張計画自体には「すでに閣議決定され、計画に反対はしていない」と基本的には容認する姿勢をみせたが、その上で、協議会の進め方に異議を唱えた。その理由として、知事は、現在も反対運動が続く成田空港建設問題を引き合いに出し、「成田は、住民の理解を先送りにしたボタンの掛け違いからはじまった」として、「行政、住民ともに大変な困難を抱えることになった千葉としては、この状況に黙っているわけにいかない」と厳しく批判した。さらに「国がマイナス面をどう考えているのか、私の方が聞きたい」と国に対する不信感をあらわにした。
 羽田空港を再拡張すると、県上空の飛行回数が年間13万回(見込み)増加するとされているが、知事は「どの程度の被害が出るのか関係者は情報を共有すべきなのに、そうした議論がない」と協議会を運営する国土交通省を批判。
 記者団から「環境基準を下回る中で、騒音問題を主張するのは地元のエゴという指摘もある」と質問されると、「トイレやごみのようなマイナス部分ばかり千葉が引き受けている」「環境基準さえ下回っていれば、何万回飛行してもよいということにはならない」と、激しい口調で反論してみせる一幕もあった。
 協議会では、同省が7月までに飛行ルートや回数などのデータを情報公開するとしたが、堂本知事は「まだ具体的に情報が提供された段階ではないので、納得はできない」と渋い表情。羽田を巡る国と千葉県の対立は、なおも続きそうだ。

【本紙の解説】
 堂本知事は「成田のボタンの掛け違い」で「千葉県が行政、住民ともに大変な困難を抱えることになった」と言っているが、その成田では住民を百パーセント無視し、暫定滑走路の完全完成を唱え、成田開港25周年に祝辞を送っている。その成田を口実にして羽田の騒音を問題にする資格はない。
 とりわけ、夜間の睡眠妨害にはなるが、それは成田の「頭上40メートルの騒音」とは比べものにならない。この成田空港の騒音を無視している堂本知事が、羽田からの上空2000メートルの騒音をとやかくいうのは問題である。
 また、千葉側と東京側で同じ騒音を「共有」するべきといっているが、羽田A滑走路から北側発信し、品川区、渋谷区と通る通称「ノースバード」コースは五反田上空を約600メートルの高度で通過することになる。千葉の市川、船橋での上空2000メートルとは騒音のレベルがまったく違う。
 はたして堂本知事はこの違いを理解したうえで、東京都民に成田並みの騒音を強制させようとしているのだろうか。

(6月14日) 空港公団、家賃を2割減免 新型肺炎影響、今月から3カ月(6/14毎日新聞千葉版、千葉日報)

 新型肺炎「重症急性呼吸器症候群」(SARS)の影響で、成田空港内の飲食店などが収入の減少を理由に、新東京国際空港公団に家賃の減免を求めている問題で、公団は13日、空港内の約450社に対し、今月から3カ月分の家賃を2割減免する、と発表した。
 家賃は、事業形態によって、飲食店などが売り上げの一部を納める「構内営業料」と、航空会社などの事務所が支払う「建物賃貸料」の2種類がある。今回はいずれもSARSの影響を受けて売り上げが落ち込んでいるため、一律2割の減免となった。SARSの影響を受けていない貨物関連会社は減免の対象にはならない。
 公団は、この減免措置で約9億円の減収を見込んでいるが、「家賃減免を求める要望書が続き、支出を細かく見直したところ可能と判断した」という。成田空港に出店している飲食店社長は「すごくありがたい」と喜ぶが、「まだまだ売り上げ状況は深刻」と不安を隠せない様子だった。

【本紙の解説】
 5月の成田空港の旅客数は前年比で43パーセント減であった。9・11の影響で02年1月から3カ月間、今回と同じテナント料の2割減免措置が取られた(02年1月9日付日誌を参照)。9・11時に月間で最も旅客数が落ち込んだのが01年10月で、32パーセントであった。それとくらべてもSARSでの旅客数の減少は激しいものがある。さらにSARSはいまも続いている病気である。WHOは景気後退の影響もあり、「地域内での新たな感染がなかった」として北京と台湾以外の渡航延期勧告を解除した。しかし、カナダのトロントのようにまた再発しかねないものである。
 空港内のテナントの中で、いまSARSより恐ろしいと言われていることがもうひとつある。それは公団の民営化である。民営化された空港内の事業に成田空港会社が乗り出すことである。空港会社の収入をあげるために、空港内の事業収入を全体収益の3分の1程度まで見込んでいるからである。いままでゼロに近いものをそこまでの事業にするとは、空港内のテナント会社を駆逐する勢いで乗り出す計画を立てているという意味だ。テナント各社は戦々恐々である。

(6月16日) 羽田再拡張で東京上空ルート設定方針(6/14夕刊読売、6/17毎日、千葉日報)

 羽田空港に4本目の滑走路を新設する再拡張事業で、国土交通省の青山俊樹事務次官は、記者会見で東京上空ルートの設定に向けた基本方針を明らかにした。
 現在、羽田空港への離着陸機の大部分は千葉県上空を通過しているが、新たに渋谷区上空と江戸川区上空に2つのルートを設定する。同省は、ルートごとの飛行回数などを詰め、来月の周辺自治体との協議会で提示する。
 羽田空港に進入する飛行機のほとんどは千葉県の木更津、千葉、浦安市などの上空を通過し、東京湾から着陸している。出発機も都心は避け、東京湾内で旋回して千葉、神奈川上空に向けて飛行している。
 計画されている新滑走路がオープンすると、年間27万5000回の現行発着枠は40万7000回に増えるため、新たな飛行ルートの設定が必要になるが、千葉県側からは、「千葉だけが騒音を押しつけられるのは困る」との懸念から、「騒音は首都圏で共有すべきだ」との声が上がっていた。
 このため、国交省は新ルートの設定に当たっては、(1)騒音の影響を受ける地域をなるべく拡大しないようにする、(2)千葉県の立場を考慮し、現在の騒音基準内で東京上空に新たな飛行ルートを設定する、(3)1時間当たり各40回の出発と到着を安全に処理できるルートにするなど基本方針を定めた。
 東京上空ルート案は2つで、1つは、北風時にA滑走路から渋谷区上空に向け出発するルート。ただ、品川区や渋谷区などの直下の地域が騒音基準を超えないようにするには、1時間当たり1回の飛行が限度という。
 2つ目は、気象条件が悪い南風時に、江戸川区上空からB滑走路に着陸するルート。視界の良い好天時は、従来通り千葉県側から進入して東京湾内を旋回して着陸するが、悪天候時には計器着陸装置(ILS)を使わなければならないため、江戸川区上空約900メートルをまっすぐに南下して着陸することになる。
 現在も悪天候時は江戸川区上空をかすめるように旋回して着陸するケースはあるが、飛行回数は年間で2―3パーセント。新滑走路が出来ると、江戸川区上空を飛行する頻度も10倍近くに上がるという。
 国交省では、江戸川ルート直下の騒音を抑えるために、(1)ILSで降りる飛行機の降下角度を引き上げる、(2)このルートの飛行は低騒音機に限定するなどの検討が必要としている。
 現在、東京上空では、早朝時間帯に出発機5機に限り大田区上空を旋回するルートが特例的に運用されているが、本格的な東京上空ルートが設定されることで、処理能力は大きく上がることになる。
 今月12日に開かれた国と8都県市による協議会では、東京都側も「騒音問題の共有」には理解を示した。しかし、渋谷、品川、江戸川区など地元との調整は今後の課題で、具体的なルート案が示された場合、住民の反発も予想される。

【本紙の解説】
 国土交通省は羽田空港の離発着便増加のために、前から羽田A滑走路(陸側の滑走路)の北風時の北側発進と南風時の北側進入を計画していた。今回も見送られたが、A滑走路に北側から進入する「ノースバード」運航(横浜ベイブリッジから北上し、三軒茶屋でUターンし、渋谷、五反田、大井を通り、羽田のA滑走路に着陸)は熱心であったが、01年10月にいったん中断している(01年10月12日付日誌を参照)。
 今回は、A滑走路からの北側発進を計画している。発進と着陸での高度の差はあるが、それでも渋谷、五反田あたりの騒音はかなり激しい。国土交通省も「騒音基準を超えないようにするには、1時間当たり1回の飛行が限度」と言っている。それほど、騒音は激しいのである。しかし、一度、飛行コースと設定されると、時間帯規制(夜間飛行禁止など)や時間枠規制などは破られるのがあたりまえで、成田でも横行している。
 江戸川コースもいままで1日平均で15便から20便以下だったものが、その10倍となると大騒音地帯となる。
 堂本千葉県知事は、環境値以下の騒音を問題にして東京都民に過大な騒音を押しつけようとしているのである。それにしても、ほくそ笑んでいるのは、国土交通省である。千葉県がいままで、千葉上空夜間飛行禁止を唱えていたのは、羽田国際化を阻止するためであった。しかし、堂本知事は羽田国際化を承認し、東京上空の飛行コースの新設を要求しているのである。堂本知事は、「抗議」といっているが、実際は国土交通省の立場を尻押ししているだけである。
 この記者会見でもうひとつ明らかになったことは、羽田空港のポテンシャルの高さである。1時間あたり、発着各40回ということは、80回のことである。夜間飛行がないことから年間40万回の発着となっているが、飛行コース問題がクリアし、24時間フルに稼働させると、年間70万回の発着が可能となる数字である。成田の発着回数をすべて飲み込んでもあまりが出る数字である。
 飛行コース問題、CIQ(税関、出入国検査、検疫)体制の確立、ターミナルビルの増設などの問題があるが、羽田国際化に向けた体制は一挙にすすむことになりそうだ。

(6月16日) 小林成田市長/反対派農家に協力要請 成田市議会で市長が表明(6/17朝日、千葉日報)

 成田市の小林攻市長は16日、成田空港の暫定平行滑走路の2500メートル化実現に向けて、6月議会終了後に、未買収地の農家に直接あい、協力要請したいとの考えを明らかにした。
 定例市議会の一般質問に答えた。同市長は成田空港問題の完全解決に向けて「空港のさらなる発展には暫定平行滑走路の2500メートル化が必要不可欠であり、最重要課題」との認識を示したうえで、「本来は空港公団が解決すべき問題だが、地元首長としても自らの問題として空港用地内の住民との話し合いを含め誠意を持った話し合いの中で、空港公団と一体となり積極的に取り組みたい」と語った。
 さらに、未買収の空港用地内農家との話し合いの時期について「市長就任後、用地取得に協力してもらってない農家とは直接あっていないが、議会終了後に行動を起こしたい」と議会後、地元市長として未買収地の農家に直接あい、用地問題への協力を要請する考えのあることを示した。

【本紙の解説】
 新成田市長は、農家と話し合いをすることを「行動を起こしたい」と表現している。人とあうことを「行動を起こす」と言う人はいないし、そんな日本語はない。これは成田市と小林市長が地権者の切り崩し攻撃を開始するということである。ある種の攻撃計画を「行動を起こす」と表現するのは自然なことだからである。反対同盟は、この小林市長の「行動を起こす」という言葉を絶対に許すことはない。
 小林成田市長は航空会社出身の立場からのみ、農家を攻撃の対象としてしかみていないのであろう。しかし、この立場と精神では、話し合いも成立しない。小林市長は、三里塚闘争の歴史をきちんと理解しているのであろうか。
 辞任した小川国彦市長が社会党の国会議員時代に成田市側の反対同盟の多くが彼の後援会に入っていた。彼が主催する新年会などには反対同盟員も参加していた。その小川国彦氏が市長に就任したときには、軽々しく「行動を起こす」とか「話し合いに出むく」とは言っていないのである。

(6月19日) スカイライナー成田停車を増便(6/20日経)

 京成電鉄は7月19日から、都心と成田空港を結ぶ特急「スカイライナー」のほぼ全便を成田駅に停車させる。成田山新勝寺の参拝客ら成田駅の乗降客を取り込む。
 新ダイヤでは東京方面行きは全24便が、成田空港行きは25便中23便が成田駅に停車する。スカイライナーの成田駅停車本数は1.4倍に増える。
 6月のスカイライナーの乗客は海外旅行者の減少から、前年同月比で3−4割減った。一方、成田駅で乗降するスカイライナーの乗客は前年並を維持している。

【本紙の解説】
 SARSによる赤字も空港と航空業界と旅行業界だけでなく、鉄道産業の京成電車にまでおよんできた。京成スカイライナーの成田駅停車が増えるのは成田市民と成田山参拝客にとって便利とは思うが、SARSの感染の危険があるとすれば、話は別である。
 成田空港から東京方面にむかうスカイライナーに乗っている空港からの乗客のかなりの人がマスクをしている。これを見て、いままでスカイライナーに乗っていた人が、車やバス、成田空港発でないJRや京成の普通電車に乗り換えたケースも多いらしい。京成スカイライナーの成田駅停車でも、そう乗客は増えないのではないか。

(6月20日) 2500メートル平行滑走路実現へ(6/21毎日千葉版、6/22千葉日報)

 成田市内の主要36法人で構成する「成田空港対策協議会」(豊田磐会長)は20日夕、市内ホテルで平成15年度定時総会を開き、2500メートル平行滑走路の実現に向けて本来計画を北に延伸させる「北延ばし案」を条件付きながら容認した。
 総会では、昨年度の活動として成田空港単独民営化を国や県に求め、認められたことが報告、了承された。今年度は、空港民営化が事実上確定したことを受け、空港と地域の共生や騒音問題の早期解決、平行滑走路の本来計画の完成に向け、空港圏形成への活動を具体化させる方針を決めた。
 さらに、空港機能の拡充と航空機安全対策上からも平行滑走路整備は不可欠であり「用地問題の進展を見なければ、北への延伸を行い、2500メートル以上の平行滑走路を完全民営化までに実現すべき」として、未買収地問題に踏み込み、「北延ばし案」を条件付きで容認。第三者機関である共生委員会の存続を求め、全体として空港民営化を強く意識した活動方針を打ち出した。
 しかし、北延ばし案容認については、来賓の地元県議から「暫定滑走路の議論の中で、一つの選択肢として北延ばし案が出ている。絶対反対とはいわないが、騒音下住民の犠牲の上に空港が運営されている実状を理解されたい。まだまだ地域づくりへの課題は多い」と、安易な容認にクギを刺す意見が出された。

 【本紙の解説】
 空対協の出発点が成田商工会議所の青年部が作り上げた団体であり、商工業者の意見が強い。昨年の7月23日( 02年7月23日付日誌を参照)に成田商工会議所は暫定滑走路を北側に320メートル延伸し、2500メートルの滑走路にすることを提案している。その後、黒野総裁がこの意見を取り上げたことで、成田市や滑走路北側の久住地区などから激しい抗議がおこり、商工会議所としては、北側再延伸を引っ込めた形になっている。
 「条件付き」で北側再延伸を容認となっているが、条件とは「用地問題の進展を見なければ」という「決まり文句」であり、北再延伸の一方的主張である。頭上40メートルの航空機騒音を受けている住民や騒音が増大する滑走路北側の住民のことなどはまったく考慮に入れていない提案である。
 民営化された「成田空港株式会社」に騒音対策費を出す余裕はない。新たな騒音コンターを作成し、騒音地区の拡大にともなう、移転補償、防音工事補助を出す財源は1000億円近くなる。むしろ、いままでの騒音・環境対策費の削減が問題になっているのである。そのために、成田空港の民営化法案でいままでと同じ騒音・環境対策の義務化、助成制度の恒久化を盛り込もうとしてできなかったのである。法文化されたのは周辺住民の生活環境の改善に配慮するという規定だけであった。これはあくまで配慮規定であり、執行義務はない。それでは周辺市町村は治まらないので、「新会社は周辺地域対策など地元との約束事を引き続き順守する」などとする覚書を締結したのである。
 「配慮規定」や「覚書」などというレベルの約束は民営化された会社の利益第一主義の前には完全に無視される。だから、成田市も久住地区も、北側再延伸には反対なのである。また、来賓で挨拶した保守系地元県議にクギを刺されるのである。

(6月20日) 羽田拡張による「騒音分散は県民の要望」(6/21読売千葉版、千葉日報)

 堂本知事、県議会の篠田哲彦議長、堀江秀夫副議長は20日、国土交通省の吉村剛太郎副大臣に羽田空港再拡張に関する意見書を手渡した。
 知事は12日、国と8都県市による協議会で、拡張後の便数増加にともなう騒音被害を千葉県だけに負担させずに、飛行コースを分散するように訴えたばかり。東京都などが理解を示し、国交省も東京上空のルートの検討などに入っているが、この日は、自民党の森英介県連会長など県選出の自民・公明の国会議員9人も急きょ駆けつけ、騒音の分散を「県民全体の要望」と改めて強調した。
 意見書は、県議会6月定例会初日の18日に発議案として出され、全会一致で可決された。再拡張事業で羽田空港に4本目の滑走路が新設されると、現行の年間27万5000回の発着枠が40万7000回に増える見通し。現在の飛行ルートが千葉上空に集中しており、再拡張後の飛行ルートの分散を求めている。提出後の懇談で、知事は「県民は、環境基準を超えていなくても騒音と感じる被害を受けている」と飛行ルート分散を改めて求めたが、吉村副大臣は「現在、鋭意検討しています」と答えるにとどまった。

 【本紙の解説】
 堂本知事と千葉県の立場は間違っている。意見書提出後の新聞記者との懇談で党本知事は「県民は、環境基準を超えていなくとも騒音と感じる被害を受けている」といっている。成田空港の騒音は、羽田から発着し千葉上空にまき散らされている航空機騒音とは比較にならないぐらい大きな騒音である。もし、本当に堂本知事が「環境基準を超えなくても被害を感じている県民がいる」と思って抗議しているならば、成田空港の騒音では、その100倍以上の抗議をすべきではないか。堂本知事は成田の騒音を視察にきたが、抗議の行動はまったくやっていない。成田の騒音を不問に付して、羽田の騒音を問題にするには理由がある。
 千葉県が羽田空港の上空騒音を問題にしてきた経過は、羽田拡張、羽田国際化に反対し、国交省に成田の完成を要求する手段であった。堂本知事は、成田新高速鉄道の補助金の増額と引き替えで、羽田の国際化を承認した。そのために、表立って反対はできないので、環境基準以下の騒音を問題にして羽田国際化に反対しているだけである。つまり、成田での平行滑走路の完成要求である。それは、平行滑走路予定地内に住んでいる地権者などからの国家権力による農地強奪要求であり、工事強行再開になる。だから、騒音直下になる東京都の大田区、品川区、渋谷区、神奈川県の川崎市などに騒音を押しつけるような論理がはずかしくもなくできるのである。

(6月22日) 反対同盟/緊急集会

 反対同盟は北再延伸攻撃の強まりに対して、110人を結集し緊急集会を開催した。集会、デモが終了後、北側に320メートル再延伸しても、ジャンボ機は飛べないことなどを記者会見で発表した。(詳しくは本紙参照)

(6月26日) 公団/減収3カ月で75億円(読売、毎日、産経の各千葉版、千葉日報)

 空港公団は26日、新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)の影響で、今年度の第1・4半期(4−6月)の減収額が、予定総収入額の18パーセントにあたる約74億9000万円に上る見通しを明らかにした。公団は当初、4月からの半年間で90億円の減収を予想していたが、来月にもそれを上回る勢いだ。一方で旅客数や発着回数は着実に回復しつつあり、黒野匡彦総裁は同日の会見で、「最悪の事態は脱したのではないか」との見方も示した。
 公団によると、6月の国際線発着回数は当初予定の23パーセント減。減収額は国際線着陸料で約12億4000万円(予定収入額の25パーセント)、旅客が支払う施設使用料で約8億2000万円(同40パーセント)など、全体で27億5000万円(同26パーセント)に上った。
 しかし、1日あたりの出国旅客数は、6月が約2万1400人となり、5月の約1万7800人から回復を見せた。7月の国際線発着回数も当初予定の13パーセント減少にまで回復する見込み。
 それでも、黒野総裁は「回復までには、1年ぐらいは覚悟している」と話し、支出削減策を継続する方針を示した。

 【本紙の解説】
 公団の赤字は空前の数字になる。4月が19億円、5月が28億円、6月が若干は回復したとしているが、27億円で5月より1億円少ないだけである。底は打ったかもしれないが、長期化することは間違いない。黒野総裁も最初は6カ月後には何とかなるとの感触であったが、「1年は覚悟している」と打ちしおれている。
 24日に、北京は渡航延期勧告と新型肺炎流行地域の指定を解除されたが、翌日の25日に、広東省で感染者が新たに1人報告されている。感染拡大の再発防止に向けウイルスの発生源についての研究が遅れており、いまだあきらかになっていない。そのために、冬から来年春にかけた再発が強く懸念されている。ワクチンや治療薬の開発に成功しない限り、解決は遠いのである。「1年は覚悟」していてもそれ以上になる可能性も大いにある。
 公団の収入減は来月7月で予定額の90億円に達する。8月から来年3月まで20億円程度の収入源は続きそうである。1年間の収入減の総額は、年間収入の2割前後の約250億円にもなりそうだ。支出削減策を強化して収入減を補うつもりであるが、このレベルの赤字は、通常経費の削減では追いつかない。整備投資や建設工事を延期や中止にするしかない。黒野総裁の地権者脅しのための工事である北側再延長もこれでなくなりそうだ。

(6月30日) 東峰神社裁判/公団、和解申し入れ(7/1朝日、読売、毎日、産経各千葉版)

 成田空港の暫定平行滑走路建設にともない、新東京国際空港公団が01年4月に滑走路南側の東峰神社の立ち木を伐採したのは地区住民の財産権の侵害だとして、成田市東峰地区の住民が公団に原状回復と慰謝料を求めた訴訟の第7回口頭弁論が30日、千葉地裁(小磯武男裁判長)で開かれ、公団側が和解を申し入れた。来春の特殊会社に向け、完全空港化を目指す公団が未買収の地区住民に歩み寄りを示したものとみられるが、住民側は態度を留保した。
 公団は申し入れの理由について「暫定滑走路の供用開始で、騒音など迷惑をかけており、地区の要望などを聞き、話し合いの意思表示をしたかった」と説明した。これに対し、住民側は「(和解申し入れは)今日、突然のことで何とも言えない。今後話し合って決める」と態度を留保した。次回の口頭弁論は9月に開かれる予定。
 訴状などによると、公団は00年12月、登記簿上の土地所有者から移転登記を行ったうえで、01年6月に「航空の安全に支障がある」と住民の反対を無視して境内の立ち木数十本を伐採した。地区住民は「神社は地区住民という共同体が共有する入会地であり、立ち木も住民のもの」と昨年4月に提訴した。
 訴えに対し、公団側は「神社の土地が公団の所有である以上、立ち木の伐採は正当」と主張してきたが、伊能楯雄・公団理事は「住民の気持ちを無視した行動であったことは十分反省に値する。不信感が増大し、謝るべきは謝らなければならない」としている。
 来春の特殊会社化を目指している公団は、暫定滑走路(2180メートル)の2500メートル化を最大の課題としており、未買収地問題で膠着した地元との話し合いを進める狙いがあるとみられるが、住民側の大口昭彦弁護士は「伐採は公団による住民否定であり、今後も入会権による所有地であることを主張する」と述べた。

 【本紙の解説】
 公団側は東峰裁判の住民側の主張に抗しきれずに和解提案をしてきた。しかし、この和解提案の政治的意図は「裁判が長期化することが、今後の用地交渉にとって好ましくないと判断した」(産経)ことにある。
 さらに、裁判の展開が公団に不利になってきたことである。あらゆる意味で公団に立ち木伐採の権利はない。神社の敷地の所有は総有形態で東峰地区の住民にあることが明白になってきたのである。
 公団の和解提案の具体的内容は明らかでないが、この間の裁判における公団側の主張から推量すると、(1)神社の使用権は東峰地区にある、(2)土地は公団が買収したので所有権は公団にある。立ち木は土地に付属しているもので公団の所有物である、(3)しかし、部落に事前通告なしに伐採したことは謝罪する。慰謝料も支払う――というような内容であろう。この場合公団側は、今後進入表面をつき破る立木があった場合に、別の手だてによる部分的伐採(たとえば航空法による)を担保として要求することも予想される。
 つまり公団は、01年6月の伐採という侵害行為そのものはあくまで法的には正当だと開き直り、あくまで事前通告がなかったことが(精神的に)遺憾であるとの主張を準備しているのであろう。
 しかし、この裁判の争点は事前通告があったかどうかの問題ではない。土地の所有権がどこにあるのか、という争いである。
 神社の使用権が東峰地区にあることは当然である。この点はすでに公団も認めている領域だ。問題は土地の所有権が総有形態であること、すなわち東峰地区の側に属しているという問題である。この土地所有形態が当裁判の最大の焦点である。
 今後、裁判はこの所有形態をめぐる論点に移行する。公団側は裁判が進むと不利と判断し、和解提案によって「土地の所有権は公団」という側面だけは確定させ、それと引き替えに言葉と慰謝料で「謝罪」するという裁判方針をとってきたのである。

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