SANRIZUKA 日誌 HP版   2006/2/1〜28    

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 2006年2月

 

〔週刊『三里塚』編集委員会HP部責任編集〕 

(2月1日) 空港勤務職員にも監視の目、入管が“抜け道”に警備員(2/2読売夕刊)

 成田空港で元「アシアナ航空」社員の男が、関係者用の立ち入り証(通行証)や暗証番号を悪用して密入国を手引きした事件を受け、東京入管成田空港支局は1日、「抜け道」となった航空会社の職員専用出口に常駐の警備員を配置し、本人確認を始めた。
 同出口は一昨年11月、航空会社の偽制服を使った不法入国が多発したため、入り口とは別に新設された。暗証番号なしにはドアが開かないシステムだが、今回の事件では、暗証番号を知る元社員が加担。逆に、通行証などをチェックする人がいないという弱点が明らかになった。
 成田空港では昨年10月、航空会社の職員専用入り口でも、監視役の入管職員2人が別業務で目を離したすきに、中国人の男が不法入国しており、空港関係者からは、常駐監視員の増員を求める声が上がっていた。

 【本紙の解説】
 成田空港は不法入国とゲリラ戦闘の取り締まりのために、さまざまな科学的装置を設置してきた。たとえば、生体認証(バイオメトリクス)で虹彩をつかった搭乗システム(04年1月8日付日誌を参照)を管制塔入室の検査に導入(05年11月11日付日誌を参照)するなどしてきた。また、爆発物をナノ(10億分の1)グラム単位で検出する検査システム(05年10月18日付日誌を参照)などである。
 しかし現実には、成田は不法入国が簡単な空港だという国際的な評判があるらしい。成田空港そのものがゲリラ戦の最大級のターゲットになっている認識が薄いのだ。その結果、警備を機械と科学装置に頼るお粗末な対応も多い。その代表的な例が今回問題となった「航空会社職員専用出入口」である。
 ここが不法入国の入り口として使われたので、対策として出入口を別にし、暗証番号を使ったシステムを導入したが、それでも防げなかった。今後は機械に頼らず監視員をおいてチェックするそうだが、監視員自身にスキや不正があるケースも多いのが実情だ。果たしてどうなるものであろうか。

(2月3日) 成田共生委員会/運用時間の延長「説明をしっかり」(2/4朝日、東京各千葉版、千葉日報)

 成田空港の運用などを監視する第三者機関「成田空港地域共生委員会」(代表委員・山本雄二郎高千穂大教授)が3日開かれ、雪などで滑走路を深夜まで延長して使う際、周辺住民の問い合わせ窓口を設けるよう空港会社に求めた。
 滑走路の使用は通常午後11時までとなっているが、先月の雪による混乱では21日に午前2時半、翌日は午前1時まで延長した。
 空港会社への問い合わせや苦情などは数件だったというが、山本代表委員は「土、日曜の深夜のため、問い合わせ先が分からなかったかもしれない。住民に説明できる体制を」と話した。
 委員は大学教授や住民代表ら17人。騒音など空港の周辺住民へのマイナス影響などを調査している。

 【本紙の解説】
 共生委員会は完全に空港会社の第2広報部となっている。深夜の滑走路運用を正当化し、それを説明不足の問題だけに歪小化している。説明さえすれば、深夜の滑走路運用はOKという立場だ。あきれたものである。
 山本代表は「2日間とも混乱しており時間延長が悪いと思わない。ただしっかり説明し、理解してもらうことが必要」と言っている。空港が混乱していれば真夜中の午前2時半でもジャンボ機を飛ばし周辺住民の安眠を妨げてもいいと言うのだ。周辺住民の健康と安全よりも空港の機能を優先する考え方である。
 そもそも空港が混乱したのは営利優先の運営思想が原因だった。早めに目的外着陸(他空港への代用着陸)に切り替え、悪天候の成田は欠航にする決断を行えば、これほどの混乱はなかったのである(06年1月22日付日誌を参照)。混乱を起こした原因は雪害だけではなく、空港の運用姿勢にこそあった。その点を不問に付して夜間運航を認めてしまうのであれば、「第三者機関」とはとうてい言えない。

(2月4日) 成田新高速鉄道 着工式(2/4朝日、毎日、日経各夕刊、2/5読売、産経各千葉版、千葉日報)

 東京都心と成田空港のアクセスを向上させる成田新高速鉄道の着工式が4日午前、千葉県成田市内であった。総事業費は1261億円で、10年度の開業を目指す。
 成田新高速鉄道は、成田空港周辺の未着工区間10.7キロを第三セクターが整備し、京成線や北総線などと接続することで東京・日暮里と空港を最速30分台で結ぶもの。三セク会社は近く用地買収に入る。開業後は京成電鉄が電車を運行する。
 同社は開通後、京成上野〜成田空港を約1時間で結んでいる「スカイライナー」型を成田新高速鉄道に移す計画。最高速度を現行より50キロ引き上げて160キロとする。

 【本紙の解説】
 4年後、2010年4月の完成予定だが、着工式特有の華やかさはない。それは成田新高速鉄道の赤字路線化が早くも明らかになったことによる。空港会社も地元自治体も赤字補てん問題で頭が痛いのである。空港会社にとっても出資金および負担金と空港内の2つの駅改修工事で計601億円の出費であり、上場を見送ったほどの財政事情をさらに悪化させる要因となる。成田市にとっては、土屋駅の設置ができなった上に、スカイライナーが新高速鉄道に移ることで成田駅はローカル駅に転落する。経済効果はマイナスにしかならないのだ。にもかかわらず自治体としては最大の負担金を負う取り決めになってしまった。市として歓迎ムードがまるでないのもうなずける。
 また都心から36分とうたっているが、あくまで日暮里からの時間だ。日暮里は都心とは言えず無意味な数字である。JR線(成田エキスプレス)は東京駅〜成田空港第2ビル駅間を最短で49分で運行している。日暮里〜空港第2ビル駅が36分といっても競争力はない。東京駅から日暮里まで11分もかかるからだ。乗り換え時間と荷物の運搬を考えれば、東京駅の方が便利な場合が多い。ただし成田エキスプレスの運賃が2940円と高いので、この面では競争力が生まれるかもしれないが、新高速鉄道が現行の京成電鉄レベルの運賃に抑えられるかどうかはかなり怪しい。
 それ以上に、新高速鉄道が完成する2010年には、羽田の4本目の滑走路が供用開始していることが問題だ。その時点で成田空港の発着便が減少していることが明らかなのである。皮肉なことに羽田国際化を認めたのは千葉県・堂本知事だ。知事は新高速鉄道への政府負担金増額と引き替えに地元の利益を売り渡してしまった。
 いずれにせよ、赤字路線が確実視される新高速鉄道の着工に歓迎ムードは薄い。

(2月6日) 談合など不正情報の受け付け電話設置(2/7朝日、東京各千葉版、千葉日報)

 工事発注事務の適正化で成田国際空港会社は6日、談合などの不正行為に関して社外からの情報を受け付けるため、専用電話とファックスを社内に設置した。匿名情報も受け付ける。
 昨年11月に発覚した新東京国際空港公団時代の電機設備工事をめぐる談合事件で設置した「工事発注不正防止委員会」の提言により、業務監理部内に設けた。工事や落札業者名など情報に具体性がある場合、調査を行うほか公正取引委員会などに通報。信ぴょう性の度合いにより契約中止や解除などの対応を取る。情報提供者に関する情報は厳重に管理するほか、希望があれば同社の調査結果を通知する。

 【本紙の解説】
 不正情報の受け付け電話を設置して談合が減るわけがない。不正を内部告白しようと思えば、伝達方式は様々あり、匿名性を確保することも可能である。空港会社が「不正防止」の努力を行っていることをアピールするアリバイ作りでしかない。不正防止の実効性とは別次元の問題だ。天下りの完全廃止や、工事発注の責任系列を根本的に転換するなどがなければ、談合や官製談合は温存されるのである。

(2月8日) 成田空港雪氷対策/機体除雪機4台増(2/9朝日、東京各全国版、読売千葉版2/12産経)

 雲の影響で1月21、22の両日、多くの旅客が足止めされるなど大混乱した成田空港の雪氷対策について、国土交通省と成田国際空港会社は8日、当面取り組む改善策をまとめ、公表した。
 空港会社は1月24日、関係部長級職員による「雪氷対策強化検討会」を社内に設置し、航空会社とも協議して対策を検討してきた。機体の除雪が遅れたことが混乱の最大原因だったことを受け、現在、各航空会社が計33台所有している除雪機については、日本航空が4台増やすことを決めた。
 先月の混乱では、除雪待ちの機体で駐機場が満杯となり、誘導路などに数珠つなぎになった機内に旅客が何時間も閉じこめられる事態も起きた。
 このため、機体の除雪作業ができて安全に旅客を機外に降ろすこともできる臨時の駐機場を、離着陸機への影響が少ない空港の整備地区内に確保する方向で検討している。
 また、ほかの空港への目的地変更が到着便の混雑回避の効果的な対策とされているものの、機材繰りや旅客への対応などを考慮して、今回の混乱時には、こうした措置が最小限の実施にとどまった。この点については、目的地変更便を増やすための条件について、空港会社と航空会社が協議していくことにした。
 一方、深夜に到着して帰宅のすべがなく、2日間で約1万3000人が空港内に泊まり込むなど、旅客への対応にも課題が多かった。都心への交通手段の確保については、リムジンバスやタクシー、JR、京成電鉄などの交通機関側と、緊急時には臨時便を出すことが可能かどうかの検討を始めることになった。
 臨時宿泊者用の寝袋と非常食が足りなかったとの指摘もあり、空港会社が1万人分を常備し、空港内の飲食施設には営業時間の延長を要請する方針も決めた。このほか、ダイヤの遅延情報を正確に旅客に伝える方法についても検討する。
 空港会社では「まだ調整段階の項目もあるが、次に同様の大雪が降った場合は同じ混乱がないようにしたい」と話している。

 【本紙の解説】
 混乱の最大の原因を除雪機の不足に求めているようだ。これでは再度の混乱は避けられない。混乱だけですめばいいが、航空機の安全からみれば、降雪時の着陸は危険が著しく増大する。雪による滑走路の氷結は大事故につながる問題である。
 混乱を避け、航空機の安全運航を確保するには、ダイバード(目的地変更)を早く決断することだ。また、混乱を避けるためには出発便欠航の決断も早く行い、その情報を周知することである。しかし、ダイバードは航空会社の経費負担がかさみ、空港側も減収になる。そのため今回発表された改善策で、ダイバードは「混雑回避の効果的な対策」だが「機材繰りや旅客への対応など」のため「最小限の実施にとどまった」と、原因のひとつにあげているだけである。今後の対応についても、ダイバード実施の条件について「空港会社と航空会社が協議する」というに止まっている。
 ダイバードは航空機の安全運航と混乱回避の最大対策である。これを軽視する理由は、航空会社や空港の営利優先の姿勢だ。本来、公共性の強い交通機関は安全性を収益性より数段上におくべきなのである。それはJRの尼崎事故や羽越線事故をみても明らかだ。
 にもかかわらず成田空港会社は、視界不良の天候条件でも着陸できる計器着陸のカテゴリーVbの導入(06年1月10日付日誌を参照)を検討し、ダイバードを極力回避することに全力を挙げている。民営化した成田空港に本来の安全対策を求めるのは無理のようである。
 しかし、民営化と営利優先の末路は尼崎事故であることを銘記すべきである。今回の降雪による混乱対策も、航空機の安全を軸に検討すべきなのである。除雪機の増設や、混乱した結果の深夜交通機関の確保、臨時宿泊者用の寝袋などの対策は二の次の問題にすぎないのである。

(2月8日) 反対同盟 天神峰現闘本部裁判「傍聴のお願い」を発送

 2月23日に、千葉地裁で行われる天神峰現闘本部裁判第10回口頭弁論への傍聴闘争への決起を訴える招請状が出された。第10回口頭弁論は争点の最終的確定が行われ、次回から立証に入る重要な公判である。傍聴闘争へ全力で決起しよう。

■天神峰現闘本部裁判 傍聴のお願い
  三里塚芝山連合空港反対同盟
 (連絡先)事務局長・北原鉱治 成田市三里塚115

 天神峰現闘本部建物の不当な撤去攻撃と闘う裁判の第10回口頭弁論が、2月23日午前10時30分から千葉地裁で開かれます。
 裁判は現在、地上権をめぐる主張が激しく繰り広げられており、今度の口頭弁論はその総仕上げとなります。また、争点が最終的に確定し次回からいよいよ立証過程に入ことから、節目にあたる重要な法廷となます。
 この裁判の攻防の核心は、反対同盟が土地を正当に使い続ける権利としての地上権をめぐる争いです。その争点は、@木造建物の存在と建物構造A地代支払い(領収証)B登記名義の3点に収れんされます。
 前々回の弁論で弁護団は、建物登記の事実と地上権設定に至った経過を明らかにしました。前回の弁論では、木造建物が現存することや、鉄骨造り建物が木造建物を増築したものであり同一物であることを主張しました。また、地代の領収書をただの紙切れだとするNAAのデタラメな主張を粉砕する弁論を展開しました。
 今回は、特に木造建物の登記名義をめぐる判例論争となります。不動産登記法上、反対同盟名義では登記できません。反対同盟はその総意に基づき小川三男(当時・衆議院議員)名義としました。これに対してNAAは、代表者=戸村一作でなければ対抗力がないと暴論を展開しており、これを粉砕する弁論を行います。
 自衛隊のイラク派兵と教育基本法改悪、改憲攻撃など小泉内閣の反動が強まるなか、三里塚は成田空港を使ったイラク派兵を阻止し、暫定滑走路北延伸と闘っています。現闘本部建物は、「へ」の字誘導路を阻止して市東孝雄さんの農地を守ることで、空港計画そのものに致命的な打撃を与える闘争拠点です。法廷を圧倒する傍聴をお願いします。
                               2006年2月7日
                記
    天神峰現闘本部裁判 第10回口頭弁論
    【日時】2月23日(木) 午前10時30分
    【法廷】 千葉地裁 501号法廷
※当日は多数の傍聴が予想されます。反対同盟は、傍聴席確保のために午前9時30分をめどに正門前に集合したいと思いますので、よろしくお願いします。

(2月14日) 官製談合「一種の業務」 初公判で元課長供述(2/14朝日、読売、毎日、日経各夕刊、2/15朝日、産経、東京、日経、日経各全国版、千葉日報)

 東京地裁で14日開かれた旧「新東京国際空港公団」発注の電機設備工事をめぐる談合事件の初公判で、公団側の担当者が官製談合を続けた動機や、天下りOBを含めて「身内の論理」で貫かれた受発注の実態が明らかになった。
 競売入札妨害の罪に問われた元工務部電気課長・客野悦志被告(56)は調べに対し、談合で受注業者を決め、予定価格を漏らしていたことについて「一種の業務のようなものだった」と供述したという。検察側は客野元課長らの調書の内容を明らかにした。
 それによると、客野元課長は「小さな公団のさらに小さな電気職の中で孤立したくなかった。私一人が違法行為をやめようと思っても(公団内で)そっぽを向かれ、業者も冷たい姿勢を取る。トラブルを避けたかった」と供述。今回の事件を前任の電気課長だった元工務部次長の伊藤貞夫被告(57)=同罪で起訴=と自分の2人だけの問題として片づけないで欲しいと述べたという。
 一方、電機設備メーカーに天下った公団元職員は、「仕事らしい仕事はなく、週に1度、公団を回って情報を取っていた」と供述した。元職員は公団を訪れて「今の工事が終わると工事がなくなる。私のメンツが立たない」と訴えるなどしていた。

 【本紙の解説】
 空港会社の官製談合が天下りのためであったことが裁判でも明らかになった。それも「一種の業務」のように行われていたとは、恐るべき感覚である。空港会社は談合を防止と称して「不正情報の受け付け電話設置」(06年2月6日付日誌を参照)などをアリバイ的に行っているが、以下のことを行えば官製談合は防止できる。それは空港会社の「天下り一覧表」と入札の入札率を合わせて公表することである。
 かつて空港公団の労組が属していた政労協、政労連が1981年から1990まで発行していた『天下り白書』(国家公務員の政府関係機関への天下りを公表)や、人事院による国家公務員の民間企業への再就職を国会に提出している通称『天下り白書』である。空港会社の退職者の再就職先と入札メーカー、さらにその入札率をみれば、官製談合の確定的な証拠にはならなくても状況証拠にはなる。そうすれば官製談合はいままでと比べてやりづらくなることは確かである。それが分かっているのにやらないのは、天下り制度を廃止できないからだ。
 これでは官製談合は終わりようがない。

(2月15日) 航空安全推進連絡会議 新誘導路の安全性に不安、安全策を要望(2/16朝日千葉版)

 成田空港の管制官や整備士、パイロット、客室乗務員らでつくる「航空安全推進連絡会議成田支部」(園川縁紀議長)は15日までに、暫定B滑走路の北への延伸にともない、安全性に不安が生じる点などについて具体的な方策を求める要望書を成田国際空港会社(NAA)に提出した。
 同支部は、B滑走路が完成した場合、新設する誘導路の形状に問題が多いと指摘。航空機が滑走路を横断しなければならないため、到着機の進入間隔を調整するなどの措置が必要となり、今以上に遅延便が増える可能性もあるという。
 管制官の北村博愛副議長は「安全性について現場の感覚と差がある。各立場の意見も聞いた上でしっかりと検証してほしい」と話している。NAAは「1カ月をめどに具体的に示せる点は回答したい」としている。

 【本紙の解説】
 新誘導路計画に関して、現場から不安と改善要求が出た。航空安全推進連絡会議(略称・航空安全会議)とは、航空労組連絡会に参加している労働者が中心に結成されている団体である。1966年の羽田事故以来の連続事故によって「航空の安全を最大の課題にし、事故の絶滅をはかることを目的」にして結成された。その航空安全会議が新誘導路の危険性を指摘した。
 新誘導路とは、現行誘導路の幅が狭いためにジャンボ機が通過できず、北側に再延伸して2500メートル化してもジャンボ機が飛ばせないために、東峰の森を分断して東側に誘導路を造るというものである。そのために、航空機が滑走路の延長線上を横断しなければならないのである。それも南向きに離陸する際には二度も横断する。これはあまりにも危険で、世界に例がない誘導路となる。
 また空港会社は、この新誘導路を使えば運用効率も上がると言っている。「誘導路を増設し2本にすれば、出発機と到着機がそれぞれ一方通行で使えるため運用がスムーズになる。現在は通行できないジャンボ機の運用も可能になり、年間発着回数は23万5000回まで拡大できる」(05年8月31日付日誌を参照)との主張だ。
 この空港会社の見解に対して、航空安全会議は「滑走路を横断するため、到着機の進入間隔を調整することで、今以上に遅延便が増える可能性もある」と指摘した。つまり現行よりも運用効率が落ちる可能性があると、管制官や乗務員など現場の労働者は判断しているのだ。
 いずれにせよ、新誘導路はジャンボ機を飛ばす(地権者への脅迫)ための苦肉の策であり、運用効率など度外視した計画にすぎない。

(2月16日) 羽田再拡張で千葉県知事が「騒音拡大懸念」と意見書提出(2/16朝日、読売、毎日、日経各千葉版、千葉日報)

 羽田空港再拡張事業に絡み、県は15日、環境影響評価法に基づき、堂本暁子知事の意見書を国交省に提出した。国が示した環境影響評価準備書を踏まえたもの。国交省は今後、環境影響評価書を作成し、北側一雄国交相に提出する。
 知事意見は(1)できる限り騒音の影響が小さい飛行ルート及び高度を設定し、管制技術による航空機の集中回避などを検討する、(2)低騒音型の航空機を導入するなどを各航空会社に要請する、(3)午後11時から午前5時台の運航ルートは、騒音の影響が小さい海上ルートとする、などとした。

 【本紙の解説】
 堂本知事は羽田空港の再拡張にともなう騒音拡大などの環境調査に関しては、国交省に意見書を提出しているが、同じ航空騒音が拡大する成田空港の暫定滑走路の北延伸には意見書も何も出さない。これは堂本知事自身が北延伸工事の積極的推進者であることの証明だ。堂本知事は、頭上40メートルの航空機騒音を聞いて「人間の住める環境でない」と言い放ち、移転を強要する立場だ。成田空港の騒音が拡大することには反対しないのである。
 羽田再拡張による飛行ルートで、木更津上空の飛行ルートの高度は3000フィート(941メートル)だ。941メートルの高度の航空機騒音を問題にする一方で、頭上40メートルの騒音には「そこに住んでいることが問題」と言い放つ。これで「市民派知事」とはおかど違いもはなはだしいと言わざるを得ない。

(2月23日) 反対同盟 天神峰現闘本部裁判

 天神峰現闘本部裁判の第10回口頭弁論が23日、10時半から千葉地裁で行われた。この日弁護団は、木造建物(旧現闘本部)の登記名義をめぐる判例論争で原告・NAA(成田空港会社)のでたらめな判例引用を壊滅的に批判した。この日をもってこれまで続いてきた論点整理が最終的に終了し、次回から本格的な立証過程に入る。
 これまでの弁論で、地上権をめぐる本部裁判の争点が以下の3点に集約されている。(1)登記された木造建物(旧現闘本部)が今も存在するのか、それともNAAが主張するように解体され、なくなったか、(2)旧地主の石橋は反対同盟が差し出した地代を受け取ったのか否か、(3)「小川三男」の登記名義に対抗力があるか否か、である。今後、原告、被告ともそれぞれの主張について、証言や証拠によって立証することになる。

 地代の授受については、前回の法廷を引き継ぎ、弁護団(一瀬弁護士)が、NAAの主張の矛盾を鋭く突く弁論を行った。NAAは準備書面(8)で「地代を返却した」としていたが、準備書面(9)では「受け取っていない」と論述しているのである。「返却」とは受け取って返したことを意味するし、「受け取っていない」というのは文字通り受けとらなかったのである。
 この鋭い指摘にあわてふためいたNAA代理人(上野至)は、「受け取ったがすぐに返したので受け取っていない」などとしどろもどろとなり、裁判長から書面で釈明するよう命令された。
 「地代を受け取った上で、反対同盟にカンパとして差し出した」というのであれば、商行為が二度行われたことになり、地代を受領したことになるので、NAAとしては「差し出されたが、受け取らなかった」としたいのである。しかし、だとすると領収証の存在をどのように説明するのであろうか。NAAは地代をめぐって決定的な墓穴を掘ったのである。
 今後、現闘本部建物の実地検証をふくめて、登記された木造建物が現存することの立証、反対同盟代表としての小川三男名義の正当性、地代支払いの立証と展開されていくことになる。
 現闘本部裁判は、いよいよこれから本格的裁判闘争として闘いとられるのである。
 次回公判は、5月11日(木)10時半、千葉地裁である。詳しくは本紙参照。

(2月23日) 誘導路の視認性改善で樹木伐採(2/24千葉日報)

 成田国際空港会社(NAA)の黒野匡彦社長は23日、暫定平行滑走路北端の誘導路の視認性改善で、成田市堀之内のゴルフ場の樹木の伐採を明らかにした。同滑走路の北端付近の誘導路の一部は、樹木の影響で管制官が直接見ることができず、画像情報などにより航空機の動きを確認している。これを改善するため同社はゴルフ場側に伐採の協力依頼を行い、このほどまとまった。伐採は約1000本で既に着手、同社は立ち木の伐採補償を行う。また、今後はゴルフ場周辺の民有地に関しても同様の協力を求めていく。

 【本紙の解説】
 空港会社が暫定滑走路と誘導路の管制塔からの視界が悪いことを初めて認めたものである。本紙では暫定滑走路が完成したときに、以下のように述べている。「北側に延長した滑走路と誘導路の北端が管制塔から死角になっている。飛行機が滑走路北端に来たとき、また誘導路から暫定滑走路へ移動中にも航空機の機影が管制塔の視界から消える。暫定滑走路と管制塔の間に成田ウインズホテル、ホリディ・イン成田、それと民有地の杉林があり、死角をつくっている。このことを公団はひた隠しにし、いまだ問題にしていない。航空機の安全運航にとって致命的な欠陥である。公団はモニターテレビを設置したというが、夜間でも正確に見えるのか」(01年10月31日付日誌を参照)。
 この民有地の杉林のゴルフ場部分の解決を今になってやっているわけである。しかし、成田ウインズホテル、ホリディ・イン成田はホテルを取り壊す以外に解決のしようがない。また誘導路の視界を遮っている大きな要因に市東さん宅の樹木がある。
 さらに北延伸した場合、管制塔からの視界は今以上に悪くなる。対策として空港会社は、新たな管制塔をつくるための調査費を計上している(05年12月20日付日誌を参照)が、暫定滑走路の建設費がかさみ、完全民営化のための株式上場が見送られている中で、新たな管制塔に100億円規模の投資ができるのか? 視界の悪さは暫定滑走路の致命傷だが、北延伸ではその問題はより以上に深刻化する。

(2月24日) 処分場早期転用へ、滑走路北伸で成田市と空港会社が合意(2/25朝日新聞千葉版)

 成田空港の暫定B滑走路の北伸化決定で、延伸用地内にある成田市の一般廃棄物最終処分場の空港用地への転用について、同市と成田国際空港会社(NAA)が基本合意に達したことが24日、わかった。両者は3月初旬にも、基本協定書に調印する。
 処分場は同滑走路北端から約600メートル離れた「成田クリーンパーク」(敷地面積4万2100平方メートル)で、計画埋め立て量は17万6000立方メートル。敷地の大半はNAAから借りている。同市は昨年8月に滑走路北伸が決まった際、NAAから空港用地転用への協力を求められていた。
 協定書案では、処分場の閉鎖または廃止や代替機能などの対応策について双方は最大限の協力をし、必要な協議を進めるとしている。北伸による処分場の早期閉鎖などに関する費用はNAAが負担するとしている。

 【本紙の解説】
 基本協定書案によれば、処分場の閉鎖または廃止、代替機能の設置、用地取り扱いの協議などの費用は空港会社が負うと決めている。また処分場の閉鎖や廃止は成田市が主体となって行うことが取り決められた。市民の立場を無視して一方的に閉鎖や廃止を決定したことは暴挙というべきだろう。
 それ以上に問題なのは、閉鎖か廃止の方法について何も記していないことだ。「成田市が主体で行う」とあるだけである。
 反対同盟がこの問題で何度も公開質問状を出して追及してきたことに、彼らは追いつめられている。空港会社と成田市の「決定」だとして一気に押し切ることはできなかったという事情も透けて見える。
 しかし「成田市が主体で行う」のなら、市としては環境問題として市民に対して議論を公にする義務が生じる。この点をあいまいにしてはならない。反対同盟と三里塚闘争は、クリーンパークの違法転用を絶対に許さない。

(2月28日) 成田空港周辺で訓練/新型インフルエンザ発生防げ(3/1東京千葉版)

 発生が懸念される新型インフルエンザに対応するための実施訓練が28日、県内で初めて成田空港や周辺医療機関などで行われた。
 感染の疑いのある乗客が成田空港に国際便で到着したとの想定で実施され、県や厚生労働省成田空港検疫所、成田赤十字病院、千葉市、船橋市などが参加。受け入れ態勢や情報提供、連携について確認し合った。
 検疫所では、内部の気圧を下げて菌を外に出さない特殊な装置が用意され、患者を収容。感染症指定医療機関の成田赤十字病院に移送した。さらに、保健所を持つ政令市の千葉市と、中核市の船橋市に事実関係を報告した。
 病院では、気圧を下げた特別病室で、患者からウイルス検査の検体を採取。検査機関へ搬送する保健所の職員に引き渡した。
 患者と同乗していた乗客たちの感染を調べるため、検疫所では名簿を作成。健康福祉センターの電話による健康調査の訓練もあった。

 【本紙の解説】
 2月に、フランスで七面鳥が鳥インフルエンザに感染し、家禽(かきん)肉とフォアグラなどが輸入停止になり評判になっている。さらに、鳥インフルエンザは欧州に拡大し白鳥などが感染している。そのために、ドイツでは連邦議会農業委員会が、鳥インフルエンザの感染が広がれば、6〜7月にドイツで開かれるサッカー・ワールドカップ(W杯)を中止することも検討しているらしい。人体への感染の全世界的本格化も時間の問題だと指摘する学者も多い。そうなると、フランス料理やサッカー・ワールドカップどころではなくなる。経済停滞にとどまらず、大恐慌の引き金にもなりかねない。少なくとも斜陽の憂き目に合っている航空業界は、その土台が崩壊しかねない事態に突入しそうである。
 各自治体でも鳥インフルエンザ対策の図上訓練や実地訓練を実施しているが、発生地からの侵入ルートは成田空港の可能性が最も高く、成田での発見と対策が日本でも流行を食い止めるカギだと言われている。
 成田空港では昨年11月、鳥インフルエンザ対策として靴底消毒を始めた(05年11月22日付日誌を参照)。かつてSARSが流行したときに体温計測機能付きカメラを設置したが、人権侵害の疑いもあり、いまは取りやめているらしい(03年4月22日付日誌を参照)。この対策で分かるように、空港通過時に感染の自覚があれば対策の取りようもあるが、無自覚で空港を通過したときに病原菌をふりまくことが懸念されているのである。鳥インフルエンザの世界的流行と成田空港からの日本侵入は、そう遠くないだろう。

(2月28日) 芝山町/北延伸で騒音下住民への町救済措置を具申(3/1千葉日報)

 成田空港暫定平行滑走路の北延伸で、県が進めている騒特法に基づく航空機騒音対策基本方針の見直しで、芝山町は28日、県に回答書を提出した。
 同滑走路南側に位置する同町では、原則として騒音区域の見直しは行わない方針となっているが、回答書では「航空機騒音で苦しんでいる地区について、新たに引き込むことを使命としたいのが本音」と前置き。「県は当事者として、この30年余りを騒音下で生活してきた住民の願いに対して、何らかの救済措置を講ずるべき」と意見を述べた。
 また、同町長と議会議長の連名で、要望書も提出。成田国際空港会社が北延伸と合わせ年間の発着回数を2万回増やす方針も踏まえ、四者協議での覚書の順守など空港周辺の環境整備、騒音対策、地域振興策について11項目を要望した。
 相川勝重町長は「空港と地域の共生の実現が趣旨。要望書には28年間の町民の思いが詰まっている。汲み取ってほしい」と述べた。
 要望書は同日、空港会社にも提出している。

 【本紙の解説】
 成田空港年間発着回数の限度は20万回で、A滑走路が13万5000回、暫定滑走路が6万5000回となっている。05年の実績はA滑走路が約13万3000回、暫定滑走路が約5万5000回であった。合計で約18万8000回である。空港関係者も暫定滑走路はこれが限度と言っている。
 昨年の10月3日の北延伸計画(05年10月3日付日誌を参照)では総発着回数は22万回に止めるとしながらも、B滑走路は、新誘導路の建設で「現在より3万5000回多い10万回とする」としたのである。しかしB滑走路は、誘導路の位置や形状に欠陥があり、10万回は土台無理な話だ。これは地権者を追い出すための“地上げ屋”的脅しである。事実、現場の乗務員、管制官、整備士などによって構成される航空安全会議から、新誘導路の危険性と運用上の欠陥(遅延必至)が指摘されている(06年2月15日付日誌を参照)。したがって、この2万回増便はA滑走路の分ではないかと言われていた。
 今回芝山町が北延伸による「騒音区域の見直しは行わない方針」としながらも、2万回が増便されるのだから「何らかの救済措置を講ずるべき」と言っていることと重ね合わせると、北延伸を口実にA滑走路の増便を狙っていることもうかがえる。

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